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Pharma DIGITAL:委託先が運営する医療従事者向けサイトで、50万人超の情報に漏えいの可能性。

旭化成セラピューティクスの医療関係者向けサイトが、運営委託先で不正アクセスを受けました。診療科付きの医療者データとMRの写真が標的型フィッシングに使われうる理由と、製薬企業が今確認すべきこと。

事案の発生時期: 2026年10月2日に不正アクセスを確認、10月6日に公表出典確認日: 2026/10/9更新日: 2026/10/9

30秒でわかる要点

要点
旭化成セラピューティクスは、医療関係者向け情報サイト「Pharma DIGITAL」の運営委託先が会員データベースへの不正アクセスを確認したと公表しました。医療従事者最大約51万4,000名(うちメールアドレスを含む約4万4,000名)と従業員約700名の情報が、閲覧または取得された可能性があります。
対応するチーム
委託先リスク、メールセキュリティ、法務・プライバシー、SIEM、IT運用
最初のアクション
医療者に接する部門に、偽の事案通知や講演会の案内への注意を促し、自社のサイト運営・マーケティング委託先に、Pharma DIGITALとシステムやデータを共有していないかを書面で確認します。
不確実性・注意点
侵入経路、アクセスが続いた期間、データが実際に持ち出されたか、医療従事者の2つの区分の重複、委託先がほかの製薬会社のために保管するデータへの影響は公表されていません。取引先として掲載されたほかの23社も、お知らせを出していません。
ヘッダー画像:「委託先の医療者サイトで、50万人超に漏えいの可能性。」の見出しの横に、公表内容として医療従事者約51万4,000名、うちメールアドレスを含む約4万4,000名、写真を含む従業員約700名、カード情報と要配慮個人情報は保管なし、と記載。
実務への示唆

自社の医療関係者向けサイトは、おそらく委託先が運営し、登録した医師全員の診療科を把握し、MRの顔写真を載せています。今夜そのデータベースが漏れたら、医師は明日、どのメールが本当に自社からのものか見分けられるでしょうか。

診療記録は含まれていません。しかし、それは見た目ほど安心できる話ではありません。 漏えいした、または漏えいした可能性があるのは、製薬企業と情報提供先の医師をつなぐ「連絡の層」です。誰が、どこで働き、何を専門とし、どの社員とやり取りしているか。これは、医療分野を狙う説得力のあるフィッシングにまさに必要な情報です。

公表された内容

2026年10月6日、旭化成セラピューティクス(2026年4月に旭化成ファーマから社名変更)は、国内の医療関係者向け情報提供サイト「Pharma DIGITAL」がサイバー攻撃を受けたと発表しました。サイトに連携する会員データベースの個人情報が、閲覧または取得された可能性があります。旭化成セラピューティクスの発表

サイトの運営と情報の管理は、委託先の株式会社医薬情報ネット(PIN)が行っています。同社も同日にお知らせを公表しました。医薬情報ネットのお知らせ、同PDF

  • 時系列: 医薬情報ネットは10月2日に不正アクセスを確認し、同日に旭化成セラピューティクスへ報告したとしています。サイトは即時停止されました。10月9日の時点で公開されているのは、ログインのない、機能を制限した臨時ページだけです(10月9日の更新を参照)。
  • 封じ込め: 両社とも、不正アクセスの経路はすでに是正し、その後の不正アクセスは確認されていないとしています。
  • 現状: 不正利用は確認されていません。関係当局への報告を行い、外部の専門組織が調査しています。対象の医療従事者には、電子メールなどで個別に連絡するとしています。
  • サイトに保管されていなかったもの: クレジットカード情報と要配慮個人情報(病歴などを含む法律上の区分)。
区分 閲覧・取得された可能性がある情報 人数(最大)
医療従事者 氏名、所属施設名、施設住所、職種、診療科など 約51万4,000名
医療従事者 上記に加え、メールアドレスなど 約4万4,000名
旭化成セラピューティクスの従業員 氏名、メールアドレス、写真 約700名

医療従事者の2つの区分は別の行で示されており、報道では合計して最大約56万人(従業員を含め約55万8,700人)とされています。日本経済新聞の報道 約4万4,000名が約51万4,000名に含まれるかどうかは、どちらのお知らせにも書かれていません。両方の行にある「など」は、項目の一覧が網羅的ではないことを意味します。

10月7日(日本時間)未明に確認した時点で、Pharma DIGITALのアドレスには一般的なメンテナンス画面が表示され、今後のWeb講演会と登録用リンクが掲載されていました。事案への言及はありませんでした。

10月9日の更新:機能を制限した臨時サイト、原因はまだ公表されず

10月9日午前10時(日本時間)の時点で、両社とも続報を公表していません。旭化成セラピューティクスのニュース一覧の最新は10月6日のお知らせ、医薬情報ネットのお知らせ一覧の最新も同日の自社のお知らせのままです。医薬情報ネットの主要株主であるJMDCも、本件について何も公表していません。侵入の経路、アクセスが続いた期間、データが複製されたかどうかは、引き続き明らかにされていません。旭化成セラピューティクス:ニュース、医薬情報ネット:お知らせ、JMDC:ニュース

変わったのはサイトそのものです。

  • Pharma DIGITALは臨時サイトを表示しています。 10月7日にはメンテナンス画面(HTTP 503)でしたが、10月9日には「Pharma DIGITALの臨時サイト」と名乗るページ(HTTP 200)を返しました。不正アクセスへの対応のため10月2日からサービスを制限して公開していると説明し、10月6日のお知らせにリンクしています。Pharma DIGITAL 臨時サイト
  • 4つのサービスのみで、ログインはありません。 添付文書、資材・廃棄袋の請求、リコモジュリンのUtility tools、講演会一覧へのボタンがあり、ログインや会員登録の機能はありません。製品に関する問い合わせは旭化成セラピューティクスの問い合わせページへ、メンテナンスとWeb講演会に関する問い合わせはasahi-kasei.co.jpのアドレスのファーマデジタル事務局へ案内しています。
  • アドレスは公式のものです。 旭化成セラピューティクスのWebサイトが医療関係者向け情報としてリンクしており、当サイトのハンティングのクエリでも正規のドメインとして扱っています。
  • お知らせは変わっていません。 問い合わせフォームは引き続きx.gdの短縮URLで、2つの電話番号とともに掲載されています。

当サイトの分析: ログインのない臨時サイトは、当面の分かりやすい判断基準になります。「Pharma DIGITALを再開した」としてログイン、再登録、情報の確認を求めるメール、SMS、電話は、両社が自社のWebサイトで再開を発表するまでは不審なものとして扱ってください。医師から問われたときにはっきり答えられるよう、MRとくすり相談窓口に伝えておきます。会員機能が再開すれば、その文面をまねたおとりが出ると考えてください。再開のお知らせには、使うべきアドレスと、パスワードの再設定が必要かどうかを明記し、短縮URLを含めないことが望まれます。

広がる被害との関係。 JPCERT/CCは10月8日、9月前後に国内組織のWebサービスへの不正アクセスが相次いでいると注意喚起しました。既知の脆弱性の探索、APIの悪用、Metabaseの脆弱性という3つのケースを示し、本来は不特定多数のアクセスを想定していないシステムも被害に遭っているとしています。組織名は挙げておらず、Pharma DIGITALへの侵入経路もどちらのお知らせにも書かれていないため、当サイトは両者を結び付けません。ただ、その対策は委託先が運営する会員サイトによく当てはまります。すべてのAPIエンドポイントでのアクセス制御、機能ごとのレート制限、有効期限のある最小権限のトークン、管理機能をインターネットに公開しないこと、目的を終えたデータを残さないことです。JPCERT/CCの注意喚起。当サイトの国内の漏えい公表60日間のまとめでは、Pharma DIGITALを委託先やプラットフォームに起因する13件の1つとして数えています。

医薬情報ネットのほかの取引先。 10月9日午前のニュース検索では、医薬情報ネットが取引先として掲載するほかの製薬会社23社のいずれのお知らせも見つかりませんでした。各社のWebサイトは再確認しておらず、下の表は10月7日の確認結果です。

10月7日の更新:ほかの製薬会社は影響を受けているか

医薬情報ネットはPharma DIGITALだけを運営しているわけではありません。マーケティング支援、学会・論文情報のデータベース、製薬企業主催の講演会の運営支援、マーケティングメディア「Medinew」なども手がけています。同社のトップページと会社概要には、主要取引先として製薬会社24社の名前が「など多数」とともに掲載されています。医薬情報ネット:トップページの取引先一覧、医薬情報ネット:会社概要

10月7日(日本時間)の午前中に、この一覧にあるすべての会社の日本語サイトを確認し、本件に関するお知らせがないかニュースも検索しました。お知らせを公表しているのは旭化成セラピューティクスだけです。 ほかの23社は、自社のデータが関係していたとも、関係していなかったとも公表していません。

医薬情報ネットの取引先一覧に載っていることは、その会社のデータが影響を受けたことを意味しません。 これまでのお知らせが対象としているのは、Pharma DIGITALに連携する会員データベースだけです。問題は、ほかの取引先のデータやそれを保管するシステムが、このデータベースとホスティング、アカウント、管理者を共有していたかどうかです。

# 会社名(医薬情報ネットの掲載順) 本件に関するお知らせ(10月7日11時30分ごろ確認)
1 旭化成セラピューティクス あり。 10月6日のプレスリリースで委託先として医薬情報ネットを明記
2 アステラス製薬 見当たらず
3 アストラゼネカ 見当たらず
4 アッヴィ 見当たらず
5 EAファーマ 見当たらず
6 MSD 見当たらず
7 小野薬品工業 見当たらず
8 杏林製薬 見当たらず
9 ギリアド・サイエンシズ 見当たらず
10 サノフィ 見当たらず
11 サンファーマ 見当たらず
12 第一三共 見当たらず
13 武田薬品工業 見当たらず
14 田辺ファーマ 見当たらず
15 中外製薬 見当たらず
16 トーアエイヨー 見当たらず
17 日本イーライリリー 見当たらず
18 日本新薬 見当たらず
19 日本セルヴィエ 見当たらず
20 日本ベーリンガーインゲルハイム 見当たらず
21 バイエル薬品 見当たらず
22 BioMarin Pharmaceutical Japan 見当たらず
23 ファイザー 見当たらず
24 ヤンセンファーマ(ジョンソン・エンド・ジョンソン イノベーティブ・メディスン) 見当たらず

「見当たらず」は、確認した時点で、その会社の日本語サイトにもニュース検索にも本件に関するお知らせがなかったことを意味します。今後お知らせが出る可能性はあるため、この表に頼る前にあらためて確認してください。

この1日で分かったそのほかの点

  • 医薬情報ネットの親会社。 同社の会社概要は、主要株主として上場する医療データ企業のJMDCを挙げています。確認した時点で、JMDCのサイトに本件に関するお知らせはありませんでした。JMDC:ニュース
  • 認証は個別システムの証拠ではない。 医薬情報ネットのサイトには、ISO/IEC 27001の認証(登録番号JQA-IM1377)が表示されています。これは監査を受けた情報セキュリティマネジメントシステムがあることを示しますが、特定のデータベースが安全に設定されていたことを示すものではありません。委託先には、認証に加えて対象システムそのものの証拠を求めてください。
  • 問い合わせ番号の変更。 旭化成セラピューティクスのお知らせによると、医薬情報ネットのセキュリティ事案の問い合わせ窓口は、10月7日までは03-6381-5788、10月8日からはフリーダイヤル0120-88-2566です。MRやコールセンターは、公式のお知らせに記載された番号だけを案内してください。番号が変わるときは、偽の「サポート」電話の口実に使われやすくなります。
  • サイトは停止したまま。 10月7日の正午の時点でも、Pharma DIGITALはメンテナンス画面(HTTP 503)を返し、今後のWeb講演会と登録用リンクを掲載していました。
  • 医薬情報ネットの方針。 同社は業界紙に対し、セキュリティ管理体制と受託業務における情報管理体制を抜本的に見直すと説明しています。ミクスOnline

自社がこの一覧に載っている場合は、 医薬情報ネットに書面で次を確認してください。自社のどのデータを、どのシステムで保管しているか。そのシステムは、Pharma DIGITALのデータベースとホスティング、アカウント、管理者を共有しているか。10月2日以前の数週間について、ログから何が分かるか。下の「コピーして使えるテンプレート」にある委託先への質問は、そのまま送ることができます。

今年2件目の、委託先が運営するサービスでの漏えい

同社の公表は2026年で初めてではありません。7月24日、旭化成セラピューティクスは、シミックヘルスケア・インスティテュート(CHI)が運営する関節リウマチ治療薬「ケブザラ」の患者サポートプログラム「RAコネクト」での漏えいを公表しています。旭化成セラピューティクスの7月のお知らせ、CHIのお知らせ

RAコネクト(7月) Pharma DIGITAL(10月)
運営 シミックヘルスケア・インスティテュート 医薬情報ネット(PIN)
サービス 患者サポートプログラム 医療関係者向け情報サイト
対象人数 1,940名(患者246名、医療従事者1,535名、従業員159名) 最大約55万8,700名
旭化成セラピューティクスへの報告 7月13日(CHIは不正アクセスを6月15日としている) 10月2日(医薬情報ネットが確認した当日)
示された原因 Webから到達できる領域のファイルへのアクセス(CHI)。同社はデータの取扱いとアクセス制御の運用上の不備と、確認・監督体制が機能していなかったことを挙げた まだ公表されていない
約束 委託先の管理・監督体制の強化 委託先の管理・監督体制のさらなる強化

今回の報告が早かったことは確かな前進です。より重要なのはパターンのほうです。製薬企業の患者・医療者データは、代理店、CRO、マーケティング会社に置かれることが増えており、「監督体制を強化する」という約束はこれで2回目です。監督には、契約の条項だけでなく、アクセスの棚卸し、診断結果、ログの保存期間といった証拠が必要です。

診療記録がなくても、このデータに価値がある理由

  1. 診療科があれば、名簿は標的の地図になる。 診療科と職種があれば、リウマチ医にはリウマチの、血液内科医には血液疾患の案内を送れます。メンテナンス画面に並ぶWeb講演会は、脊椎外科、関節リウマチ、敗血症、DIC、骨粗鬆症、血液疾患にわたります。
  2. 2種類の到達手段。 約4万4,000件のメールアドレスで直接フィッシングができます。約51万4,000件の施設名と住所で、病院や診療所に、ありふれた見た目の郵便、電話、連絡を送れます。
  3. 従業員データで「なりすまし役」が作れる。 約700名の氏名、メールアドレス、写真があれば、MRになりすますのに十分で、ほかの社員のアドレスの形式も分かります。
  4. こうした連絡は、もともと届くのが普通。 医師は日常的に、製薬企業から講演会の案内、安全性情報、製品情報をメールで受け取っています。内容だけでは偽物と本物を見分けられません。
  5. 事案そのものがおとりになる。 会員には、事案について個別のメールが届くと案内されています。問い合わせ電話番号は10月8日に変わります。問い合わせフォームは短縮URL(x.gd)で示されており、読んだだけでは行き先を確かめられません。どれも、攻撃者がまねできる正当な出来事です。リンクを信用しないよう求める通知は、通知自体にリンクがなく、読み手が確かめられるドメインだけを使っているときに最も効果があります。

攻撃者の視点:このデータで何ができるか

不正利用は確認されていません。以下は、防御側が備えるべきことを知るために、レッドチームが行う分析です。手法はMITRE ATT&CKに対応付けています。

段階 今回の場合に想定される動き ATT&CK
委託先への侵入 公表されていません。インターネットに公開された会員サイトでよくある経路は、Webアプリケーションの脆弱性、公開された管理画面、委託先やホスティングの認証情報の窃取です T1190 Exploit Public-Facing Application、T1078 Valid Accounts、T1199 Trusted Relationship
収集と持ち出し 会員データベースの閲覧やエクスポート。お知らせは「閲覧または取得」としており、持ち出しは確認されていません TA0009 Collection、TA0010 Exfiltration
標的の選定 職種と診療科で名簿を分け、専門ごとにおとりを選ぶ T1589.002 Email Addresses、T1591.004 Identify Roles
基盤の準備 サイト、委託先、ブランドに似たドメインを登録し、送信用アカウントを用意する T1583.001 Domains、T1585.002 Email Accounts
配信 「Pharma DIGITAL再開のお知らせ:再登録のお願い」「事案に関するご確認」、リンクやQRコード付きの講演会の案内 T1566.002 Spearphishing Link
なりすまし 「新しい問い合わせ窓口」を名乗る電話や、実在のMRの氏名と写真を使ったメッセージ T1566.004 Spearphishing Voice、T1656 Impersonation
目的 他の医療系サイトで使い回されたパスワード、「講演会参加費」の支払い情報、添付ファイルを通じた病院のPCへのマルウェア T1078 Valid Accounts、T1204 User Execution

防御を考えるうえで大事な点が2つあります。これらの段階のほとんどは自社ネットワークの外で起きるため、端末のアラートよりも、メール、DNS、ブランドの監視が重要になります。そして、おとりは旭化成セラピューティクスだけにとどまりません。診療科付きの国内医師の名簿は、どの製薬企業になりすますのにも使えます。

防御側の対応:製薬企業のチーム向け

1. 今週中に:自社の委託先が関係していないかを確認する

  • 直接のつながりを確認します。 医薬情報ネットのWebサイトには、国内で事業を行う大手を含む20社以上の製薬企業が取引先として掲載されています。同社は、Pharma DIGITAL以外にも、医師の学会活動のデータベース、KOLや医師ターゲティングのデータ、CRMやマーケティングオートメーションとの連携などのサービスを紹介しています。医薬情報ネットのWebサイト 一覧に載っていることは影響を受けたことを意味せず、どちらのお知らせもほかの取引先への影響には触れていません。同社と取引がある場合は、書面で確認してください(下のテンプレート)。
  • 委託先が運営する医療者向けサービスをすべて洗い出します。 医療関係者向けサイト、講演会の登録、医薬品情報サイト、マーケティングオートメーション、KOLデータベース、試供品の申込フォーム、患者サポートプログラム。それぞれについて、運営者、保有データ、自社システムとのつながり(シングルサインオン、CRMとの同期、APIキー)を記録します。
  • 自社環境へのつながりがあれば、 委託先の侵害プレイブックの段階1と段階4に従い、アクセスを洗い出したうえで、制限、交換、監視を行います。

2. 自社へのなりすましに備える

  • 公式ドメインを1ページにまとめて公開します。 医療者とのやり取りに使うサイト、講演会の基盤、送信ドメインを載せ、すべての通知からリンクします。
  • リンクや短縮URLを含まない通知を送ります。 サイトはブックマークか自社のコーポレートサイトから開くよう案内します。
  • DMARCを強制します。 サイトやキャンペーン用を含め、送信に使うすべてのドメインでp=rejectまたはp=quarantineにし、ドメインそのもののなりすましを防ぎます。
  • 似たドメインを監視し、 削除依頼の経路を事前に決めておきます。国内ではJPCERT/CCがフィッシングサイトに関する依頼を受け付けています。
  • MR、MSL、くすり相談窓口に説明します。 短い対応スクリプトと、医療者が本人確認できる方法(コーポレートサイトの代表番号から折り返すなど)を渡します。
  • 委託先サイト上の社員アカウントを確認します。 委託先が運営するサイトに社員のプロフィールや管理者アカウントがあれば、何が保存されているかを確認し、他で使い回している可能性のあるパスワードは漏えいしたものとして扱います。再設定とサインインの確認はアカウント侵害プレイブックを参照してください。

3. 影響を受けた委託先が自社のものだった場合

  • 委託先とのデータの流れ(CRMとの同期、シングルサインオン、APIキー)を止め、共有シークレットを交換し、自社側のログを保全します。
  • 委託先に証拠を求めます。影響を受けたシステム、データ、期間、痕跡情報、確認したログです。
  • 個人情報保護法では、個人データの取扱いを委託する事業者は委託先を監督しなければならず(第25条)、通常は委託元が報告を行います。不正アクセスによる漏えいや、1,000人を超える漏えいは、個人情報保護委員会への報告対象です。委員会は、事案を知ってから概ね3〜5日以内の速報と、30日以内(攻撃など不正の目的による場合は60日以内)の確報を求めています。個人情報保護委員会:漏えい等の対応

4. 対応すべきチーム

チーム 確認すべき範囲 次の対応 必要な証拠
委託先リスク・購買 医療関係者向けサイト、講演会サイト、ターゲティングデータを扱う委託先 下の質問を送り、回答を日付付きで記録する 書面の回答、契約条項、再委託先の一覧
メールセキュリティ Pharma DIGITAL、委託先、自社サイトを名乗る、公式以外のドメインからのメール ハンティングクエリを実行し、確認した類似ドメインを見直し日付きでブロックする メッセージの一覧、受信者、クリックの記録
営業・メディカル(MR、MSL、くすり相談窓口) 医療者からの問い合わせと、社員へのなりすまし スクリプトで説明し、偽の連絡の報告を記録する 日付と経路付きの報告記録
IT運用(ID) 委託先が運営するサイト上の社員アカウント 使い回されたパスワードを再設定し、サインインを確認する アカウントの一覧、再設定の記録
法務・個人情報 医療者向けの委託先が持つ個人データ 監督の証拠と、報告の準備ができているかを確認する データの一覧、委託契約
SIEM/SOC 社内端末から類似ドメインへのアクセス DNSとプロキシのクエリを定期検索に登録する 時間範囲と情報源付きのクエリ結果

ハンティング:おとりは自社に届いているか

痕跡情報(IOC)は公表されていません。 攻撃者のIPアドレス、ドメイン、送信元アドレスは示されていません。そこで、下のクエリはテーマで検索します。Pharma DIGITALや委託先を名乗りながら別のドメインから届くメールと、類似ドメインにアクセスした端末です。自社へのなりすましに備えるには、自社のサイト名やブランド名をパターンに加えてください。

すべてのクエリは例示であり、実データでは実行していません。テーブル名と項目名は、2026年10月7日(日本時間)に各社のドキュメントで確認しました。報道や社内での議論もヒットするため、ノイズは想定してください。

1. Pharma DIGITALや委託先を名乗る、ほかのドメインからの受信メール。 Microsoft Defender XDRの高度な追求(Advanced hunting)。EmailEventsとEmailUrlInfoにはDefender for Office 365が必要です。

// Illustrative; not run against live data. Microsoft Defender XDR advanced hunting.
// Inbound mail since 2 Oct 2026 that names Pharma DIGITAL or its operator but was not sent from their domains.
// Add your own HCP portal and brand names to LurePattern to watch for impersonation of your company.
let Since = datetime(2026-10-02T00:00:00Z);
let LurePattern = @"(?i)pharma ?digital|ファーマデジタル|医薬情報ネット|REPLACE_WITH_YOUR_PORTAL_NAME";
let OfficialDomains = @"(?i)(^|\.)(asahi-kasei\.co\.jp|akp-pharma-digital\.com|pin-japan\.com|pin-japan\.co\.jp)$";
EmailEvents
| where Timestamp > Since
| where EmailDirection == "Inbound"
| where Subject matches regex LurePattern or SenderDisplayName matches regex LurePattern
| where not(SenderFromDomain matches regex OfficialDomains)
| join kind=leftouter (
    EmailUrlInfo
    | where Timestamp > Since
    | project NetworkMessageId, UrlDomain
    ) on NetworkMessageId
| summarize Recipients = dcount(RecipientEmailAddress), UrlDomains = make_set(UrlDomain, 10),
    FirstSeen = min(Timestamp), LastSeen = max(Timestamp)
    by SenderFromAddress, SenderFromDomain, Subject, DeliveryAction
| order by FirstSeen asc
| take 500

2. 類似ドメインにアクセスした社内端末。 Microsoft Defender XDRの高度な追求。DeviceNetworkEventsにはDefender for Endpointが必要です。

// Illustrative; not run against live data. Microsoft Defender XDR advanced hunting.
// Devices that contacted domains resembling Pharma DIGITAL, other than the official site.
let Since = datetime(2026-10-02T00:00:00Z);
DeviceNetworkEvents
| where Timestamp > Since
| where isnotempty(RemoteUrl)
| where RemoteUrl matches regex @"(?i)pharma[-_.]?digital|REPLACE_WITH_YOUR_PORTAL_PATTERN"
| where not(RemoteUrl matches regex @"(?i)(^|[/.])akp-pharma-digital\.com([/:]|$)")
| summarize Connections = count(), FirstSeen = min(Timestamp), LastSeen = max(Timestamp),
    Processes = make_set(InitiatingProcessFileName, 5)
    by DeviceName, RemoteUrl
| order by FirstSeen asc
| take 500

3. 同じメール検索をSplunkで。 Splunk Add-on for Microsoft Office 365のメッセージ追跡の入力、sourcetype o365:reporting:messagetrace。インデックス名を置き換えてください。

index="REPLACE_WITH_O365_INDEX" sourcetype="o365:reporting:messagetrace" earliest="10/02/2026:00:00:00"
| eval sender_domain=lower(mvindex(split(SenderAddress, "@"), 1))
| where match(Subject, "(?i)pharma ?digital|ファーマデジタル|医薬情報ネット|REPLACE_WITH_YOUR_PORTAL_NAME")
| where NOT match(sender_domain, "(^|\.)(asahi-kasei\.co\.jp|akp-pharma-digital\.com|pin-japan\.com|pin-japan\.co\.jp)$")
| stats count AS messages dc(RecipientAddress) AS recipients min(_time) AS first_seen max(_time) AS last_seen BY SenderAddress Subject Status
| convert ctime(first_seen) ctime(last_seen)
| sort 0 first_seen

例のダウンロード:メールのKQL・端末のKQL・Splunk SPL

ほかの製品。 同じ考え方をSumo LogicのDNSやプロキシのログで行う例です。ソースカテゴリーを置き換えてください。公式ドメインを含む行は除外されるため、別途確認してください。

_sourceCategory="REPLACE_WITH_DNS_OR_PROXY_SOURCE_CATEGORY" *pharma*digital* NOT "akp-pharma-digital.com"
| count by _sourceCategory, _sourceHost
| sort by _count

CrowdStrike Falcon(LogScale/Next-Gen SIEM)で、端末からのDNS要求を調べる例です。

#event_simpleName=DnsRequest
| DomainName=/pharma[-_.]?digital/i
| DomainName != *akp-pharma-digital.com
| groupBy([DomainName, aid], function=count())

結果がなくても、何も届いていない証明にはなりません。ログの欠落や保存期間切れがありえ、個人アドレス宛てのメールは見えず、おとりがサイト名を含むとは限りません。EmailEvents・EmailUrlInfo・DeviceNetworkEvents

コピーして使えるテンプレート

[角かっこ]の部分をすべて置き換えてください。社外に出す文面は、法務または個人情報の担当者が確認します。

医療関係者向けサイト・マーケティングの委託先への質問

件名:Pharma DIGITALの事案を受けたご確認のお願い([会社名])

[委託先名]
[ご担当者名]様

2026年10月6日に旭化成セラピューティクス株式会社と株式会社医薬情報ネットが公表したPharma DIGITALの事案を受け、次の事項について[日付]までに書面でご回答をお願いいたします。基盤、ホスティング、再委託先は共有されていることが多いため、貴社が別の会社であっても、1と2はご確認ください。
1. 当社のデータを取り扱うシステム、データベース、ホスティングのアカウント、管理者、再委託先のうち、Pharma DIGITALまたは株式会社医薬情報ネットの業務にも使われているものはありますか。
2. 当社の医療者会員、従業員、施策に関するデータに影響はありましたか。または現在確認中ですか。
3. 貴社が保有する当社のデータ(医療者会員、講演会の登録者、KOL・ターゲティングのデータ、従業員のプロフィールと写真)の種類、件数、保存期間をお示しください。
4. 管理者は会員データベースにどのように接続しますか。すべての管理者アカウントとホスティングのアカウントで多要素認証を必須にしていますか。
5. 会員サイトとデータベースの脆弱性診断を最後に行ったのはいつですか。高リスクの指摘はすべて修正済みですか。
6. 管理者のサインイン、データベースへのクエリ、データのエクスポートについて、どのログをどれだけの期間保存していますか。
7. 会員のパスワードを保存している場合、どのように保存していますか。
8. 不正アクセスが疑われる場合、何時間以内に、どの確認済みの経路で当社に通知いただけますか。
9. 貴社と当社のシステムをつなぐ認証情報や連携(シングルサインオン、CRMとの同期、APIキー)は何で、最後に交換したのはいつですか。
10. 当社案件のセキュリティ事案の責任者と、時間外の連絡先をお知らせください。
何卒よろしくお願い申し上げます。
[会社名・部署・氏名]

MR・くすり相談窓口向けの対応スクリプト

医療関係者からPharma DIGITALの事案について聞かれた場合:
・「Pharma DIGITALは旭化成セラピューティクス社のサイトで、[当社名]のものではありません。[当社のサービスへの影響は知らされていません/当社でも委託先に確認しており、影響があればお知らせします]。」
・「講演会の案内、サイトの再登録、事案の確認などを名乗り、リンクを含む、パスワードを求める、見覚えのないアドレスから届く連絡には、十分ご注意ください。」
・「当社の公式サイトは[ドメインの一覧]です。当社がメールや電話でログインのパスワードを伺うことはありません。当社からの連絡か確かめたい場合は、[コーポレートサイトの代表番号]にお電話ください。」
記録すること:医療者からの質問と、話に出た不審な連絡(送信者、件名、日付)。[セキュリティ担当の連絡先]に伝える。
してはいけないこと:原因を推測で話す、不審なメッセージをほかの医師に転送する、他社の事案について何かを約束する。

経営層向けの5行の報告

1. 何が起きたか:旭化成セラピューティクス社の医療関係者向けサイト「Pharma DIGITAL」の運営委託先が会員データベースへの不正アクセスを確認し、医療従事者最大約51万4,000名と従業員約700名の情報が閲覧・取得された可能性がある(2026年10月6日公表)。
2. 当社への影響:[株式会社医薬情報ネットとの取引あり/なし]。[医療者向けの委託先から、システムを共有していないとの確認を得た/まだ得ていない]。
3. 想定されるリスク:製薬企業を装い医師を狙うフィッシングやなりすまし。当社のブランドや社員が使われる可能性もある。
4. 実施中の対応:[日付]に委託先へ質問を送付、MR・くすり相談窓口にスクリプトを配布、メールとDNSのハンティングを実施中、公式ドメインのページは[公開済み/準備中]。
5. 必要な判断:[例:公式ドメインのページの公開、キャンペーン用ドメインでのDMARC強制、医療者向けサイトの委託先監査]。次回報告:[時刻]

まだ分かっていないこと

  • 攻撃者がどのように侵入したか、 そしていつからアクセスしていたか。公表されているのは確認日の10月2日だけです。
  • データが複製されたのか、 閲覧できる状態だっただけなのか。お知らせは「閲覧または取得された可能性」としています。
  • 医療従事者の区分が重なっているか、 そして「など」がほかにどの項目を含むか。たとえば、ログインIDやパスワードのハッシュ値は保存されていたのか。
  • 同じ委託先が運営するほかのサービスや、 ほかの企業のために保有するデータに、同じシステムから到達できたか。医薬情報ネットが取引先として掲載するほかの製薬会社23社は、いずれもこの点を公表していません。
  • なぜ会員データベースに従業員の写真があったのか、 そして従業員に直接知らされたか。
  • 会員機能がいつ再開するか、 そして会員にパスワードの再設定や再登録が必要になるか。

出典と更新履歴

2026年10月9日10時45分ごろ: Pharma DIGITALが、ログインのない機能を制限した臨時サイトを公開していることを追記しました。旭化成セラピューティクス、医薬情報ネット、JMDCの続報はなく、ほかの取引先のお知らせもニュース検索では見つかりませんでした。10月8日のJPCERT/CCの注意喚起と、当サイトの60日間のまとめへのリンクを加えました。

2026年10月7日11時45分ごろ: 医薬情報ネットが取引先として掲載する製薬会社24社すべての状況(お知らせを公表しているのは旭化成セラピューティクスのみ)、同社の主要株主と認証、新しい問い合わせ番号、業界紙への同社の説明を追記しました。

2026年10月7日: 初版。各社のお知らせ、委託先のWebサイト、Pharma DIGITALのメンテナンス画面は10月7日(日本時間)未明に確認しました。原因や最終的な影響範囲が公表されれば、この分析を更新します。

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